大人の発達障害への取り組み


  学校教育の中で「特別支援教育」が始まってもう20年近く経とうとしています。学校ではかなりの程度、普及・定着しつつありますが、しかし社会の中ではまだまだ十分な理解や支援が進んでいないのが現状でしょう。しかし子供だけでなく大人の中にもかなりの程度、発達障碍(診断があろうとなかろうと、または明確であろうとグレーゾンであろうと)的な傾向をお持ちの方はたくさんいらっしゃいます。考えてみれば20年前の子どもたちが今や大人になっているのですから。

 

 もちろんいままで自覚はなくても、ネットの世界で沢山発表されている発達障害のチェックリストなるものを試して「自分は発達障碍ではないか」と心配されたり、職場で同じミスを繰り返す、対人関係が苦手で苦しんでいる等々の思いをひそかに胸に抱えている方も多いと思います。そのぐらい「大人の発達障碍」の問題は身近な問題なのです。


必要なのは自分の特性を自覚し、現実的な対処法を工夫すること


 これまで自分の生きにくさやトラブルの原因が「いい加減な性格」「気持ちが緩んでいる」というような精神論で片付けられるものではない、きっと何か原因があるはずだとお悩みの方は、一度発達検査を受けて病院を受診をお勧めします。

 

 場合によっては診断がおりて服薬によってかなりの程度生きづらさが軽減されることも有るでしょう。診断を受けることで「自分の性格や人柄に問題があったわけではないのだ。脳の機能に偏りがあることが原因なのだ」「自分を責めなくてもいいのだ」と気持ちが楽になられるかもしれません。そういう意味で「診断」は大切なステップだろうと思います。

 

 

 しかし考えてみれば、なにがしかの「障碍」であると診断されたところで現実的には何も変わりません。服薬で気持ちが落ち着いたり集中が増してくるということはあるでしょうが、夢の薬のように障碍を無くしてくれる、というわけではありません。やはりご自分の特性を理解し、周囲にも理解してもらい、それぞれの事情に応じた「現実的な対処法」を身につけていくことが必須ではないでしょうか。

 

そうすることでトラブルやミスが少しずつ減り、「罪責感」や「自信の喪失」「自己否定感」がやわらいでくれることが何よりの目的でもあります。


具体的にはどうすればよいのか


では具体的にはどうすればよいのでしょうか?

私が多くの相談者にお伝えしているのは「まずご自分の弱いところ、強いところを自覚する」ことだと説明させていただいています。ところが冷静に客観的にご自分を見つめるというのはそう簡単ではありません。発達検査を受ければはっきりするのですが、そうでない場合、やはり発達に詳しい第3者に判断してもらう必要があります。それには日頃のエピソードを聞かせてもらい、「あなたの場合こういうところが弱いから、こういう問題が起きているのではないか」という見立をしてもらいます。

 

 それが他のエピソードにも共通していてご自分でも納得されたならば、そこから具体的な対処法を一緒に考えていくことになります。たとえば「うっかりミスが多くて困っている」場合、それが「聞く力」の弱さから来ているのか「覚えて、思い出す力」から来ているのか、他のエピソードにも関連させて判断し、その弱さをどうやって補っていくかを考えていくのです。

 

 具体的には 1)当面の現実的な対処法の工夫 2)認知の弱いところを「底上げする」トーレニング の二つをお話しさせていただきます。1)の現実的な対処法については、日々の職場や日常生活で起こりがちなトラブルやミスを防ぐための工夫を一緒に考えます。たとえばうっかり忘れが多い方には、具体的なメモの取り方の練習や忘れない工夫を検討します。そして2)にあげた「認知の弱さ〈聞く力・見る力・覚えて思い出す力・作業に集中する力)などに関連する弱点を補うためのトーニング方法を紹介し、何種類か毎時間の面接場面で繰り返し積み上げて、少しずつですが「認知の力の底上げ」を図ります。

ただしどちらも「人が変ったように成長する」特効薬ではなく、冷静な自覚と日々の積み重ねによって少しずつ改善していく、いわば地道な努力です。

 

このような「工夫と努力」によって少しづつ改善していくことによって、トラブルやミスが減っていきい結果的に生きづらさが果然していくことを目指しています。


一人では続かなくてもサポートがあれば続けられる


こういう地道で着実な取り組みは、なかなか続けることが難しいものです。なにより自分の苦手な分野に向き合おうというのですから。

 

 しかも注意集中が継続しない傾向のある方は、最初はすぐに飛びつくのですが、そのうちに嫌になってしまいます。私のところに来られても残念ながらADHD傾向のある方は続かないことが多いのですが、むしろそういう方こそご自分の特性を自覚されて覚悟を決めて取り組まれるべきではないか、と思っています。

  

そのためにもぜひサポーターとともに、時には「もう面倒くさい」と投げ出したくなる気持ちや「こんなことしてもすぐに結果は出ない、無駄だ」となげやりになる気持ちを何とかなだめながら取り組み続けましょう。一人では長続きしない事でも、サポーターの励ましや激励を受けながら息の長い取り組みをされることを願っています。

 

オフィス岸井では発達障害児・者の方々との豊富な経験と実績をもとに、あなたに最適なサポートをさせていただきます。

 

もし取り組む覚悟が整いましたら、いつでもご連絡ください。