パーソナリティ障害


パーソナリティとは何を指すかというと、その人の行動様式を指します。人によってそれぞれなので、それが「その人らしさ」や「個性」となるのですが、しかしあまりに偏りがひどくなると日常生活や対人関係で問題になってきます。

 

その偏りは主に ①認知 ②感情 ③対人関係 ④衝動制御 の4つの領域においてられ、それが固定化されて思考・感情・行動において独特のゆがみをもたらすようになった時、パーソナリティ障害と呼ばれるようになります。

 

パーソナリティ障害は、主にA~C群の3つのタイプに分けられます。

A群には、猜疑性、シゾイド、および統合失調型パーソナリティ障害が含まれていて、これらの障害をもつ人の特徴は、奇妙で風変わりに見えるタイプです。

B群には、反社会性、境界性、演技性、および自己愛性パーソナリティ障害が含まれていて、これらの障害をもつ人の特徴は、感情・衝動の制御に問題があるタイプです。

C群には、回避性、依存性、および強迫性パーソナリティ障害が含まれていて、これらの障害をもつ人の特徴は不安または緊張・恐怖を感じているように見えるタイプです。

 

では具体的に見ていきます


それぞれのパーソナリティ障害について


◇◆◇ A群:奇妙で風変りにみえるタイプ ◇◆◇


<猜疑性パーソナリティ障害>

猜疑性パーソナリティ障害の基本的な特徴は、何かについて他人が関わってきた時にその動機を悪意のあるものとして解釈するような不信と疑い深さです。

 基本的に他人を信用せず、他人が自分を利用する、危害を加える。またはだますに違いない、と決めてかかります。その結果、自分は他人に深く傷つけられてきたと感じ、彼らの行動に疑いと敵意の証拠を見つけようとします。

 また病的な嫉妬等も見られ、常にパートナーの浮気の証拠を子細に集め、攻撃したりもします。以前は「妄想性パーソナリティ障害」と言われ、根拠もなく被害妄想や一方的な恨みを持つことが特徴です。

<シゾイドパーソナリティ障害>

シゾイドパーソナリティ障害の方の特徴は、他の人々といるよりは孤立を好む一匹狼的なところがあり、家族や周囲の人に対して親密な関係を持ちたいとか、喜びや楽しみを感じることがほとんどありません。

 また他人からの称賛や批判に対しても無関心で、感情が乏しくあっても平板な印象を受けます。特に怒りや喜びのような強い感情に対しては表現が難しくよそよそしい印象を受けます。

 活動もどちらかと言うとコンピューターや機械などの無機質で抽象的な活動を好み、誰かと一緒に活動したり、友だちも少なく、恋人や他人との性体験などもあまり興味が持てないようです。

ただ物事のとらえ方に歪みはなく、思い込みや一方的な恨みを持つというようなことはありません。

 

 

<統合失調型パーソナリティ障害>

統合失調型パーソナリティ障害は独特の対人関係の持ち方と、知覚・認知的な歪み、奇異な信念や考え方、理屈では説明できない魔術的思考・空想、奇妙で風変わりな行動や外見を特徴とします。

 いわゆる「風変わりな人」の印象ですが、独特の世界に生きているということもできるでしょう。たとえば迷信やゲン担ぎを信じていて、しばしば独自の儀式的な行動を続けたり、偶然の出来事や事件に対して独自の解釈で自分と関係づけて反応したりもします。

 対人関係も基本的に煩わしいものととらえていて、親しい人とのかかわりの中でも急に一方的な不快感に襲われて孤立したり、一人きりになることを望んだりします。

幻覚・妄想までは行きませんが、知覚や身体感覚のゆがみ、関係念慮が見られることはあります。



◇◆◇ B群:感情に振り回されるタイプ ◇◆◇


<反社会性パーソナリティ障害>

反社会性パーソナリティ障害の基本特性は人を欺くこと、人を操作することにあります。この障害は少なくとも18歳以上であること、また15歳以前に素行症のいくつかの症状があることが前提です。

具体的には

1)法にかなった行動という意味で社

  会的規範を守ることができない

2)繰り返し嘘をつき人をだます

3)衝動性や攻撃性が強く、自分また

  は他人の安全を考えない行為をす

  る

4)一貫した無責任

5)良心の呵責の欠如

などが当てはまります。

特に人の気持ちに対する共感能力の低さ、非情で冷淡、慢心した傲慢さがある一方、口が達者で表面的な魅力にあふれきわめて能弁で流ちょうな言葉を使う傾向もあります。

<境界性パーソナリティ障害>

境界性パーソナリティ障害は対人関係・自己像・感情などの不安定さ及び著しい衝動性を持ち合わせた特徴があります。特に現実、または想像の中で「見捨てられることへの恐怖」がありそれを避けようとなりふり構わぬ態度に出ます。

 

面接時間が少し遅れたり、大切な人が少しその場を離れただけで、見捨てられ不安が募り、極端な絶望感やパニック、怒りが湧き起ってくることも有ります。

逆に身近な相手を自分のことをすべてわかってくれる人として理想化し求め続けるため、それに応じられなくなった相手に対して極端な幻滅と怒りと復讐心が湧き起ってくるのです。

 

そこには自分のすべてを理解し庇護し受け入れてくれる理想的な対象と、自分を拒絶し見捨てる残酷な対象との分裂が見られ、「理想化とこきおろし」という反転現象につながってきます。

<演技性パーソナリティ障害>

演技性パーソナリティ障害の基本特徴は常に自分が注目を浴びていなければ楽しくなく、自分に注意を引き付けるために過剰で劇的な演出をして「話題の中心人物」になることを目指します。

 また時には、状況に不適切なほどの性的で挑発的、誘惑的な衣装や言動をすることも有りますが、常に表面的で浅はかさが見られ、その場限りの演出である事がほとんどです。

 その結果、自己演劇化、芝居がかった言動、誇張した情動表現が見られ、場合によってはそういう自分に酔いしれて役になり切ったような恍惚感を感じている場合もあります


<自己愛性パーソナリティ障害>

自己愛パーソナリティ障害は自分が「特別」な存在であり、周囲から認められ賛美を受けるにふさわしい存在でありたいという欲求に浸り、その結果周囲の人への共感性が欠如した「特権意識」にとらわれている状態です。

 

 彼らはしばしば、際限のない成功、権力、才能、美貌、理想的な愛の空想にとらわれており、期待をしています。一流で完璧で最高の存在でありたいという心理のは背景には、逆に満たされない愛情への不満や自尊心の傷つきが見え隠れし、自分よりも優れた人への過剰な嫉妬やねたみ、あるいはそういう称賛を与えない周囲への攻撃となっていくことも有ります。

 

彼らに対応するには表面の誇大さ、傲慢さの影に隠れた傷つきやすさ、空虚感に配慮をする必要があるでしょう。



◇◆◇ C群:不安で内向的なタイプ ◇◆◇


<回避性パーソナリティ障害>

回避性パーソナリティ障害の方は、人から非難されたり拒絶されることを恐れて対人接触のある職業を避けたり、自分が好かれていると確信できなければ人と関わることができません。

 

また批判されたり恥をかかされることを恐れ親密な人との間でも引っ込み思案になります。自分が確実に受け入れられると思えない限り新しい友人も作りたがりません。

 

自分に自信が持てないわけですが、それ以上に注目され接触するだけで自分が傷つけられるのではないかという不安から内気になり、臆病で引っ込み思案になります。

 

日本人の文化では比較的周囲に遠慮気味であったり人の目を気にすることはありますが、それ以上にその回避傾向が日常生活に様々な支障をもたらす場合を指していると思います。

<依存性パーソナリティ障害>

依存性パーソナリティ障害の基本特性は、他人の援助なしでは十分にやっていけないという自分に対する認識から、日常生活の様々な面で他人から助言と保証と援助を求めます。

 

 自分自身の考えで計画を進めたり、物事を行うことが困難であるという気持ちがあり、一人になるとやっていけない不安と無力感を感じています。

 

 特に親密な関係(恋人、家族)への依存が見られることがあり、自分の能力と長所を過小評価して「あなたなしではやっていけない」という自立できていない生き方であると言っても良いでしょう。

 

日本文化の個を持たない集団主義的な生き方にも共通する部分がありますが

それが極端になり日常生活全般に影響を与えている場合に診断されると言えます。

<強迫性パーソナリティ障害>

強迫性パーソナリティ障害の特徴は、秩序・完璧主義・状況をコントロールすることにとらわれていることです。彼らは過度に注意深く、細部にまで非常な注意を払い完璧を目指します。その為に要する努力が他の人にとって不便と迷惑を被っていることには気が付いていません。

 さらに道徳や倫理などに関しても非常に厳格で融通が聞かないことも有り、周囲との関係がぎこちなくなりがちです。

 そういう自分の方針に従わなければ他の人に仕事を任せることはできず、周囲にその厳格さを求めます。

過度な厳格さとその方針を周囲にも強いる、あるいは受け入れられない場合は一緒の活動することまで拒むという頑固さが特徴ですが、それが比較的常識の範囲であれば、むしろ確実で優秀な人材として評価されることも有ります。

加えて名称は似ていますが「強迫症」とは強迫観念と強迫行為が伴わない点で異なる事にも注意が必要でしょう。