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「時が来たら 誇りをもって、脇へどけ」

「人生を愛せよ、死を思え、時が来たら、誇りをもって、脇へどけ。

          一度は生きなければならない。それが第一の掟で、

                一度だけ一度だけ生きることが許される。それが第二の掟だ。」

  エーリッヒ・ケストナー『警告』より

樹木希林が引用したことで広く知られることになった児童文学者で詩人のエーリッヒ・ケストナーのことば。

 

「時が来たら 誇りをもって 脇へどけ」 この言葉にどれだけ私は救われたことでしょう。

 

私が40歳代で、人生これからだ、と半ば自信満々でうぬぼれていた頃、60歳後半の「衰えの見えた、しかしプライドだけは非常に高い」と思えた先輩諸氏を多少冷ややかな目で見つめていたことがあったことを思い出します。

 

それはなぜかというと、自分自身が冷ややかな目で見つめられていることに気が付いたから。

40歳代・50歳代の油が乗り切って、自分に対する自信にあふれた中堅諸氏に、「そういえば、あの時自分はああいう視線で先輩を見つめていたなぁ」と自分自身の姿を見つけたのです。

先輩諸氏は、もうすでに大半の方がこの世にはいらっしゃいません。

いずれ私も同じ。

 

   一度は生きなければならない。それが第一の掟で、

                 一度だけ一度だけ生きることが許される。それが第二の掟だ。

脇へどいて、道を譲ったとしても、自分の人生に対する「誇り」だけは失いたくないものです。

誰が認めてくれなくとも、それが生きてきた証なのかもしれない。

 

 「一度だけ一度だけ 生きてきた自分を 最後に一度だけ ほめてあげること。」

 

それが第三の掟ではないかな。