新しい年を迎え、しばらくたちましたが、みなさん、「あたらしい ぼく(わたし)」に目覚めましたか?
「あたらしい」どころか「去年のやり残した仕事」が一杯で困っている人もあるでしょうが、やはり人間は成長するもの。
新年を迎えたからと言って、急に脱皮はしないかもしれませんが、今年こそは!と誓いを新たにしましょう。
ところで今日、紹介する絵本は、文字通り「あたらしい ぼく」
“なんか へんなかんじなんだ / たしかに ぼくは ここにいるんだけど / そのぼくは ぼくじゃないみたいなんだ”
ぼくは朝目覚めた時、なんだかへんなかんじにおそわれました。それはまるで「ぼくがぼくでないような」感じ、「今までのぼくとは違うあたらしいぼくがここにいるような感じ」だったのです。こう言う体験をされた方も皆さんの中にいらっしゃることでしょう。いえいえ、実は誰でもみんな、こう言う体験をしているはずなんです。ただ、その瞬間を覚えているかどうか、だけなのでしょう。
こう言う体験をドイツの発達心理学者シャルロッテ・ビューラーさんが『自我体験』と名づけました。ひとことで言うと「ふいに自分自身に気が付いてしまう体験」「今までの自分を外から眺める新たな自分が生まれた瞬間」とでも言うのでしょうか。こういう突然の自己への目覚めを見事に描いていくれた絵本が、この「あたらしい ぼく」。
いままで気に入っていた部屋の壁紙も、仲の良い友達が遊びに来ても、今までの遊びはなんだかしたくない、可愛い妹と一緒に遊ぶ時間も何だか、ちょっとその気になれない。自分の部屋に戻っても、今までのお気に入りのカードやおもちゃなどとても子どもっぽく見えてしまう・・・。そしてぼくは部屋の中の色々なおもちゃやがらくたを全部箱に詰めてしまい込んでしまいます。
“パンダや、カードや、ビーだまで 遊んでいた、いままでの ぼくは いなくなった そして・・
ぼくは いま ここに いる
ぼくは・・・・・あたらしい ぼくなんだ”
もしこの「自我体験」に興味がある方は次の本もとても面白いですよ。
この本に、心理学者のユングの「自我体験」がインタビューで語られています。興味深いですね。
“それは 11歳の時でした。私は学校に行く途中の道で、ふいに霧の中からぬけ出したのです。それまでずっと霧の中にいて、霧の中を歩いていたけれども、そこから抜け出して『自分がいる』ことが『自分が何者であるか』がわかったかのようでした。それから私はこう考えました。では『以前の自分は何者だったのだろう?』それからこのような答えが浮かびました。私は霧の中にいて、自分自身と他の物を区別する方法を知らなかった。私は単に多くの物の一つに過ぎなかったのです”
ユングさんが他とは決定的に違う「自分」と言うものに気が付いた瞬間でしょう。この本にはユングさんだけでなく、一般の人たちから収集した貴重な証言がたくさん掲載されています。大変興味深い本でした。関心があればゼヒ。
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