「僕はね、2週間前から上機嫌という治療法をやっているのだが、とても具合がいいよ」
前からこの言葉が気になっていたのですよ。この言葉は哲学者のアランの言葉です。
「上機嫌療法」とはいったいどういうものだろう?
アランの本を読むとわからないではないんですが、「療法」というからには何か定式化されたものはないのな?と思いつつ、そんな堅苦しく考えていたら顔つきが難しくなって、上機嫌ではいられない。
要するに「楽しいこと」を頭に思い浮かべよ、という事なのかも。
そう考えていくと出会ったのが「気分一致効果」という概念。
これを教わったのがこの本。
誰でも過去を振り返れば、思い出したくない記憶の一つや二つはあるだろう。ところが「思い出したくない」と言いながら、その場面を思い出せるのだからその「イヤな記憶は消えない」のだ。困ったもんだ。
特にうつな気分になると一般的には記憶の力は弱まってくるのに、なぜか過去の様々な出来事が「ネガティブな物語」として頭の中に渦巻いてしまう。これをネガティブな認知の枠組みの影響だ、認知の枠組みを変えようと指摘するのは簡単でも、実際にはそれができないから困っているのだ。
この榎本先生の本は、「認知」という側面よりも、より実際的に日常的な行動でネガティブな物語に彩られた記憶をネガティブな物語へと変換する、ちょっとした振る舞いのヒントを教えてくれている。
ものすごく簡単にまとめれば「人はその時の気分に一致した出来事を想起する」傾向があるので、とにかく「今の気分」を切り替えろ、という事らしい。
本の中で紹介されている実験がある。それはある集団を二つに分けて一方は「楽しく誘導し、幸せな気分」に誘導する。もう一方は「悲しい話をして、悲しい気分」に誘導し、その後、ある同じお話を聞かせる。そして一定の時間後、その話について思い出してもらうと幸せな気分のグループはお話の中の「楽しいエピソード」を沢山思い出し、悲しい気分のグループは「悲しいエピソード」を思い出すことが多かった、とのこと。これを「気分一致効果」と呼ぶ。
確かにそうだろうな。私たちの日常生活でも落ち込んでいる時はいやな出来事や憂鬱な思考が頭の中で悪循環の渦を巻き、逆に楽しい気分の時は前向きでポジティブな考えが湧いてくることはよくある。そう考えると、要するに「最初の気分」が引き金であって、その気分をポジティブに切り替えることで「上機嫌」が続いていくことが考えられる。
ではどうやって気分を切り替えればいいか?これについてもう少し考えてみたい。
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